「蝉の声がしない」という。今年あまり気にしたことはなかったが、確かにけたたましく鳴いている蝉の声がしない。
先週日が落ちたあとの散歩で、ようやく四谷見附公園(通称どんぐり公園)でニイニイゼミが鳴いていた。蝉たちが暑い日中ではなく夜街灯の下で鳴くことは以前にもこの欄で書いた記憶があるが、それも今年はまだこの一回きり、おそらく一匹だけだった。
毎年悩まされていた蚊も、猛暑/酷暑ではあまり活動出来ないようで、ここ数年は夏よりも初秋の虫になっている。人類が滅んでも生き残ると囁かれるゴキブリも、あまりの猛暑のためかあちこちで亡骸(焼死体?)を見た。彼らの死骸は「過酷」をその遺した体で表しているかのようだ。
「夏眠(カミン)」という現象があるそうだ。生物の基本的な生存戦略の一つで、過酷な環境条件に耐えるために一時的に活動や成長を止めて生命を維持する行動。冬眠は寒さや食料不足に備えるために行われ、夏眠は高温や乾燥といった厳しい夏の環境を乗り切るための手段なのだとか(森林・林業学習館
そういう能力を動植物・昆虫が天然で保有していることに衝撃を受ける。なんと神は、取るに足らない(と人間が勝手に判断する)生きものにさえ、高度なメカニズムを持たせたものよ。そのくせ人間にはそういった能力がない(とこれまた勝手に判断しているのかもしれないなぁ)。「万物の霊長」なる冠詞はそろそろ返上した方が良い。
異常が異常でなくなってもう数年。わたしたちも根本的に考えを改めねばならないのだろう。謙虚であれということだな。
選挙の報道に接し、まぁなんと謙虚の欠片もないことと…。
2025
13Jul
四谷快談 No.224 夏眠というメカニズム
