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2026
22Mar

四谷快談 No.260 魚肉ソーセージ

  • 四谷快談

 先日、幼稚園職員の「1年間お疲れさま会」の会食があった。
 席上で好物の話になった。わたしはかつて「棺桶にハムやソーセージを入れてほしい」と言うほど大好きだったが、最近はお刺身と日本酒の組み合わせのほうが嬉しくなりだしている。そんな話で盛り上がったのだが、話している途中でまたしても、小さな思い出が心を過ったのだった。
 わたしがまだよちよち歩きの頃、母に連れられてスーパーマーケットに買い物に行くと、店員さんたちがみんな手を休めてわたしを見ていたという。そのわたしは、よちよち歩いて魚肉ソーセージの棚まで行くと、おもむろにソーセージをむんずと掴むのが毎回のお決まりで、店員さんたちはそれを見て毎回笑っていたのだと母が言うのだ。
 もちろん私自身に記憶はないのだが、小学生の頃閉店してしまったそのスーパーマーケットにはやはり魚肉ソーセージの棚があった。そして何より、わたしが子どもの頃の「ソーセージ」と言ったら、それは百パーセント魚肉ソーセージだったし、そのソーセージが太く短くなったのがハンバーグだった。ハムはと言えば、真っ赤なケーシングに包まれたプレスハム。特に思い出深いのは四角いハムだ。それが極上だった。
 1970年にファミリーレストランというのが誕生する。しかし地方にそんなモノは来ない。外食という文化さえなかったのだ。だからオトナになってファミレスで「ハンバーグステーキ」なるものを初めて食して、とても驚いた。魚肉じゃない上に牛肉メインなんだとか。確かにファミレスとはハンバーグステーキを食べる店だった。
 今の幼稚園の子どもたちがこんな話を聞いたら驚くだろうし、ピンとこないだろうなぁ。なんだかとても貧しい話なのだが、それが切ないほど幸せな情景としてよみがえってくるのだ。これもまた春の陽気のなせる業なのかもなぁ。

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