埼玉県の道路陥没が連日取り上げられている。直径4メートルを超える巨大な下水道管が破損したのだと。
国土交通省の発表では、2022年度に発生した道路陥没は1万548件。そのうち下水道破損が原因のものは2600件に上るらしい。もちろん今回ほどの大規模な陥没は珍しい事例だと思うが、地球から月までの距離を優に超える全国の下水道も、耐用年数は50年であることを思えば、その点検ですら膨大な費用が発生し、さらに修繕となると気が遠くなる。
広島市内にある多数の橋の管理保守費用も問題になっていた。広島市のホームページには「23年1月31日現在で3209橋、橋長15m以上のものは794橋。このうち架設年次が不明である54橋を除いた740橋について、建設後50年を経過する高齢化橋は239橋で、約32%を占める」とある。大きい川が5本も通る中心市街地は、至るところ橋だらけだ。
地面の下にあるのは下水道ばかりではない。今回の事故で断面図が示されるのを見ても、地下の混雑ぶりが良くわかる。それらは家屋敷ではなく道路の下を走る。時々通行止めでガスや電気や上下水道、通信関係の工事が行われているのだが、改めて「迷惑だ」など努々思ってはならないのだと反省。
太平洋戦争終結から80年。戦争の大混乱から抜け出し、高度経済成長を経てつくられてきた私たちの国・故郷・街のインフラが、その整備完成度と比例して耐用年数の限界を徐々に迎えている。安全のための費用をどうやって捻出するのが良いのか。
丁度国会で予算委員会が開かれ始めた。元国防相は「楽しい日本」よりも「強い日本」なんて言う。あなたが「強い」と言ったらソッチの方を想像するしかないではないか。だが、戦争(武力攻撃事態等及び存立危機事態)に備えることよりも先にしなければならないことが、あの大陥没に象徴されているのではないか。街・故郷・国の全部が陥没してしまわないために。
2025
02Feb
四谷快談 No.201 大陥没
