2001年12月に仙台ホサナ教会が発行した「甲原一説教集」がある。1992年1月から2001年3月まで仙台ホサナ教会の牧師を務め、隠退の記念として発行されたもの。先生は2010年8月に天に召されている。
甲原先生は神戸聖愛教会の前身神戸バプテスト教会で洗礼を受け、1949年に東京神学大学に入学。奉仕神学生として四谷新生教会で1951年から56年まで過ごし、1962年から1975年まで主任担任教師を務められた。
この四谷時代、牧師としてまた幼稚園長として苦労されたことが先述の「甲原一説教集」の最後の一篇「真の自由人を目指して」にあるのだ。書かれているのはこんなこと。務めたばかりの教師が辞めたいというので話を聞いたら「この幼稚園は目標がハッキリしていないからどうしていいのかわからない」という。そこから始まって教会の目標とキリスト教保育の明確化に取り組んだという実践の報告でもある。かなり赤裸々な言葉も綴っている。
この説教の中でA・Sニイルの「人間育成の基礎」という本が取り上げられている。そして奇しくもその本はわたしが幼児教育を考える時によって立つ中心的な本のひとつなのであった。
早速、2024年度を進めるにあたり教師たちと幼稚園の保育の基本根本大本を考える会議の資料として、この説教のコピーを配布し、わたしの思いを話す機会をいただいた。
四谷新生幼稚園はもとより教会附属幼稚園であるのだから、「キリスト教保育」を「自由保育」をもって実践するという揺るがない芯がある。だが「キリスト教保育」も「自由保育」も謂わば業界用語の域を出ず、保護者に対する訴求力に欠ける。そこで四谷新生幼稚園の「保育の基本根本大本」を「子どもを(ホンキで)信じる」というフレーズにしてみたい、と。
甲原先生の経験したことが60年余を経て今日再び中心的な課題になっているではないか。幼稚園も教会も今がその時なのだ。
2024
14Apr