四谷新生幼稚園はいわゆる「102条園」。これは旧学校教育法(1947年施行)の102条に規定されている幼稚園ということ。現在の法体系では学校教育法附則第6条となる。「私立の幼稚園は、(略)当分の間、学校法人によつて設置されることを要しない。」。出生率が高かった時代、そのうま味につけ込んだ悪質な幼稚園を規制するため、設置要件を学校法人のみとしたが、その基準に沿わない現状も多数あり、「当分の間」という文言が付いて、そのまま75年を経たわけだ。
内田樹さんが教育についてこう書いている。「「お代を下されば、それと等価の商品を差し上げます」じゃありません。「とりあえずお代は要らないから、来てわたしの話を聴いてくれ」ということです。そこからしか教育は始まりません。」(「困難な成熟」 株式会社夜間飛行 2015年9月)。この「とりあえずお代は要らないから…」が悩ましい。幼児教育は小規模がよいとしても、その総てを自力で賄う厳しさは目に見えている。よりよい教育をなどと考えだしたらその困難には拍車がかかる。頭にわざわざ「キリスト教」と付ける「保育」の現場でも、そんな現実的課題は当然あるし、むしろ顕著なのかもしれない。
そういう中で四谷新生幼稚園は今年ひとつの決断をした。23年度から施設型給付の幼稚園になるということ。「施設型給付」を単純に言えば必要な経費を自治体が負担してくれる制度。運営に自治体が加わることで経営面では大幅な改善が見込まれる。ここ数年60名規模を維持してきた四谷でも新規募集の6割程度しか満たせなくなり、50名から60名が精一杯。非常勤も含めて12人のスタッフを自力でカバーできないのは目に見えていた。
運営上の非常に大きなウェイトを占める「経営」に見通しが付いた今、わたしたちはようやく落ち着いて本来の「キリスト教」保育を進めることが出来るのではないか。「すべては子どものために」。文字通り「すべて」をそのために。