幼稚園の教師室からウッドデッキに出る小さなドアがある。体を少し斜めにしないと通り抜けられない。
朝、子どもたちを迎えるために門に出ようとした。この狭いドアを通ったとき、上着のポケットの裏がドアノブに引っかかった。先日も同じことが起きたので一歩下がって上着を外そうとしたほんの2〜3秒の出来事、上履きが滑って体勢を崩した。アッと思った瞬間、転倒を免れた体勢を支えたのは、開いたドアのアルミ枠と、その尖った縦線に思いっきり打ち付けた額だった。
ヤバい、と思ってトイレの大きな鏡を見た。案の定眉間にぱっくり割れた傷から血が流れている。顔面は小さな傷でも流れ出る血の量が多いのだが、さすがに子どもの前にこれはマズい。慌てて幼稚園にある大きめの絆創膏をとりあえず貼り付けて、定刻僅かに遅れて門に立った。だが、門をくぐる子どもたちの足がみんな止まる。その目がわたしの眉間に釘付け。どうやら絆創膏はいっときの慰めで、みるみるうちに血が滲み出している模様。とりあえず20分ほどは立っていなければならず、おいでになる親子にはその都度「たった今そこで転けまして」と事情を説明する。子どものひとりは門に立ったまま「園長先生の怪我が早く治りますように、イエスさまのお名前によってお祈りいたします。」と。ビックリするやら嬉しいやら恥ずかしいやら。
それほど深刻な状態ではないように自分では思うのだが、みんなが心配してくれるのがありがたい。お帰りの時間に「いかがですか」「病院へは行かれましたか」。大の病院嫌いの私はちょっと高めの絆創膏に貼り替えて様子を見ようとしているのだが、母たちはそれを半ば呆れている模様。だよねぇ、ごめんね、いつまで経っても男の子なのさ。顔の傷は勲章らしいよ。
さて、傷跡が残らずきれいに直るが謳い文句の絆創膏、その効果は如何ほどか。まさか自分の額で実証実験するとは思わなかったが、5日目あたりを、乞うご期待。