わたしは農村伝道神学校の寮で神学生時代を過ごした。当時学校の修業年限は5年(大卒であれば途中編入可)で、5学年で30名を過ぎるくらいの学生が一緒に暮らしていた──2022年現在、学生寮に住んでいるのは卒業して神学校で仕事をしている二人の職員だけだそうだ──。
「農村伝道神学校」というだけあって、神学校のカリキュラムの中に「農業実習」という時間が一年次必修で水曜午後いっぱい組まれていて、わたしが当事者だった時は各々畑を耕して個別の野菜を育てていた。その他にも校地の林の管理や整備も行っていた。春先などはタケノコ掘りばかりやっていた。そして収穫物が食堂で供されるわけで、タケノコの季節はタケノコばかり食べていた──というか、旬の時期には旬のもの(だけ)、タケノコだけではもちろんない、贅沢と言えばそうかも知れないけどね──。
四谷という都心の真ん中(一応新宿区だけど、港区と千代田区に隣接)で幼稚園には畑がある。子どもたちも喜んで作付けや収穫をする。キュウリやトマト、ジャガイモ、ナス、オクラ、ポップコーン、ジャンボピーマン、空豆、スナップエンドウ、そうめんカボチャ、ヒョウタン、ゴーヤーetc…。夏野菜がそろそろ終わって秋まきのキャベツやブロッコリー、ロマネスコ、芽キャベツが植えられはじめた。夏休み中などは野菜の育つスピードが速くて、しょうがないから牧師・園長の胃袋に無事収穫されるのだが、大概は子どもたちが収穫してみんなで戴く。
こう書くとなんだか「食育してます」を売る幼稚園みたいだけど、そんな意図は全くない。でも自分の口に入るモノがこんなふうにつくられているということを知るのには意味があるだろう。
いつの日かそこから、食べ物は誰がつくるのか、どうやって来るのか、今の人類を取り巻く環境問題や経済問題、格差や貧困にまで広く関心が広がるかも知れない。そんな射程は意図しているぞ! と力みつつ、今日の収穫を楽しんでいる。