「海が荒れるようであれば引き返す、条件付きの運航」だったと知床観光船の社長は記者会見で語った。
昔何度か知床を訪れた。連れ合いの実家のある北見から斜里町まで2時間弱、そこからウトロ港までは40分ほど。いつかは根室海峡側の羅臼まで行ってみたいと思いながら、斜里から羅臼までさらに1時間半は行程に無理があり、いつもウトロ止まりだった。斜里町には日本一気持ちが良いとわたしが思う直線18キロにも及ぶ通称「天に続く道」もあり、ウトロまでの陸路には見所多数な上、おいしい海鮮丼も待っているし、件の観光船──わたしたちは大型船オーロラ号で、しかもカムイワッカの滝までだった──にも乗船した。長い道のりをウトロまでたどり着いたら、やはりどうしたって船に乗りたくなる。
北海道に実家があるので良く飛行機も利用した。出発地の天候がどんなに良くても、目的地の天候によって飛行機は「条件運航」──出発地に引き返す選択もあり──となる場合がある。何度も直面した。幸いわたしは目的地変更になったケースを経験していない。だが、出発時には条件に合意するものだ。戻ってくるならまだしも、全く別のところへ連れて行かれると却って困ったことになるだろうと思う。それでも「じゃあ今回は止めよう」とはならない。ほぼ毎回同意の上搭乗する。
移動と観光では訳が違うだろうけど「場合によっては引き返しますよ」と船長がアナウンスして乗船を取り止めるだろうか、わたしの場合。出発時に凪いでいるようならなおさら。途中船長に対して「引き返しましょうよ」なんて絶対言わないだろう、逆に「え〜帰るの」と文句言うことはあったとしても、わたしの場合。
だけどそれもこれも、これまで何事も無かったからここに書けるわけだよね。今後観光船各社は、さらに厳しい条件を厳格運用して運航することになるのだろう。それでも足りないほどに、本当に痛ましい事故だった。