アニマルウェルフェアという言葉を初めて聞いた。
「動物を「感受性のある存在」と捉え、家畜にとってストレスや苦痛の少ない飼育環境を目指す考え方のこと」だという。例えば養鶏場で採卵用の鶏をケージではなく平飼いや放し飼いにすることで鶏自体の立つ・寝る・向きを変える・身繕いする・手足を伸ばす自由を助けるような家畜の飼い方を言うらしい。
わたしの伯父が一時養鶏をしていたので、子どもの頃から鶏を飼う、卵を採るという現場を見て来た。それは確かにアニマルウェルフェアという考え方からは批判される飼い方だった。だが、他の飼い方なんて知らなかった。伯父ちゃんは知っていたのかも知れないが、甥っ子のわたしにとっては他人事でしかない。
そして「卵は物価の優等生」と呼ばれていることも知った。その背後に伯父のような働きがあることを、密かに誇らしく感じてもいた。ケージの前には餌用の樋があって、その下に伸びたラックに産みたての卵が転がる。それを集める手伝いをよくやったものだ。糞尿はケージの下に落ち、卵だけが綺麗に取り出される仕組みに関心もした。それが「生卵を食べられる」日本の風土づくりに役立ってきたのだ。これもまた誇らしいことだった。
そんな少年には鶏の気持ちなんて伝わらなかったし知ろうともしていなかった。相手がいのちある存在だということすらひょっとしたら考えてもみなかったかも。我がことながらゾッとする。
アニマルウェルフェアについて日本では9割が知らないらしい(2016年データ)。最近日本ハムが2030年までに国内の全農場で妊娠ストールを廃止すると発表した。養豚に関するアニマルウェルフェアだ。多国籍企業のファストフードチェーンも既に続々アニマルウェルフェ対応を表明しているらしい。知らなかった。消費者の選ぶ力が世の中を変えていくことになるのだな、多分。
他の道を知らないということが自己絶対化を推し進めるのだとしたら、選択肢があるのだということを先ず知ろう。