ヨエル2:23−3:2/使徒2:1−11/マタイ12:14−21/詩編51:12−19
「さて、エルサレムには天下のあらゆる国から帰って来た、信心深いユダヤ人が住んでいたが、この物音に大勢の人が集まって来た。そして、だれもかれも、自分の故郷の言葉が話されているのを聞いて、あっけにとられてしまった。」(使徒2:5-6)
「お祭り」というのはなんだか心が躍りますね。
岩手県・遠野では9月に「遠野郷八幡宮」のお祭りがありますが、神社のお祭りというよりも地域に伝わる60を超える伝統芸能が一堂に会する「郷土芸能の祭典」でした。今では人口2万6千ほどの小さな街ですが、その賑わいは熱気にあふれていました。
山口県・防府市には「防府天満宮」があります。左遷され太宰府で無念の死を遂げた菅原道真の死後100年ほど経って天皇の勅使が道真最後の寄港地である防府天満宮に遣わされ「無実の罪」を告げたことに由来した祭で、毎年道真に「あなたは無罪でした」と告げ続けるのですが、その祭に奉仕する者は佐波川の水で身を清めてそのままの姿で神輿を担ぐので、「裸坊まつり」ともいわれる大変熱気あふれる祭です。11月の寒い中で数百人の裸坊が重さ500キロを超えると言われる御網代輿(おあじろこし)を天満宮正面から滑らせ大石段を降ろすのがハイライトです。
川崎には勝負の神さまである稲毛神社があって、夏に「川崎山王祭」が行われます。勝負の神だけあって、男神と女神の結婚妊娠出産にまつわるお祭りです。神社の玉神輿と孔雀神輿という二つの神輿が練り歩くほか、各町内ごとに所有する神輿約20基が2日間町を練り歩きます。
四谷だとやはり須賀神社の例大祭ということになるでしょうか。尤も「四谷祭」と言えば慶応大学の学園祭の名前ですね。
今例に挙げたのはどれも神社のお祭りです。神社に祀られているカミに由来する故事が祭の始まりであることが多いわけですが、その故事は実はカミ以前の人々の暮らしと密接に関わっている場合があります。逆に言えば人々の暮らしがあって、その暮らしに合わせて神話がつくられていった。神話としてまとめ上げられることで、パッケージとして事柄が後世に伝えられるようになった。そういう側面があるのでしょう。
わたしたちキリスト教が「ペンテコステ」というお祭りを祝っている今日この日は、ユダヤ教の「週の祭り」に由来しています。その祭とは、過越の祭から7週目。モーセがシナイ山で律法を神から授かったことを記念するお祭りです。それ自体はいわば神事であり神話です。それ以前にある人々の暮らしで言えば、この季節は夏の小麦や大麦の収穫時期でした。その他にもぶどうやいちじくやザクロやオリーブや椰子の実などの初ものを収穫し感謝のうちに神さまにお供えすることが作法でした。イスラエルが遊牧民から土地に定着し農耕民になっていく課程で収穫を感謝する夏の祭として定着していったのでしょう。
この祭はたった二日間だけ祝われます。その祭のさなかに、人々が驚くような出来事が起こったわけです。あちこちの国の言葉、多数の、無数の言葉で、しかしたったひとつのことが語られていた。それは「神の偉大な業」(2:11)の事だったというのです。
町に住んでいた人たちは、モーセが成し遂げたエジプト脱出という驚くべきことと、神の祝福のしるしとして律法が与えられたことを今お祝いしている真っ最中です。そのお祭りムード満載の中で、それ以上に人々を驚かせ惹きつけた出来事が今巻き起こった。聖書は「人々はこれを聞いて大いに心を打たれ、ペトロとほかの使徒たちに、「兄弟たち、わたしたちはどうしたらよいのですか」と言った。」(2:37)と記しています。
祭で祝われていることは一体なんなのか。わたしたちにとっても楽しい数々の祭があるけど、そこで祝われていることは一体なんなのか。実は案外知らなかったりしますよね。みんな楽しそうにお祝いしている。その意味を弟子たちがあらゆる国の言葉で次々に語り出した。だから聞いている人たちは皆、その言葉の意味がわかったのでしょう。だからあっけにとられたし、どうしたらよいのか知りたくなったのです。
わたしたちにも与えられている賜物があります。それをまず喜びましょう。すると周りの人々がきっと不思議がるに違いありません。「どうしてあなたは・・・」って。だって神さまに生かされているのです。喜ばずにおれますか。2000年前に起こったこの日の出来事は、きっとそんなことだったのではないでしょうか。
祈ります。
すべての者の救い主イエスさま。あなたが教えてくださった神さまの約束が、わたしたち一人ひとりの上に実現しました。神さまはわたしたち一人ひとりに、豊かな賜物を与えてくださっています。そのことを喜んで生きる者としてください。わたしたちが喜んで生きることこそ、あなたに従う道であることを示してください。復活の主イエス・キリストの御名によって、まことの神さまに祈ります。アーメン。