ローマの信徒への手紙は紀元56~58年頃、コリントで書かれたと言われています。
地中海の沿岸にはパウロの伝道によって幾つもの異邦人教会が育っていました。けれど、異邦人世界への使徒としての自覚と誇りを持つパウロの胸には新たな夢が膨らみます。それはイスパニアへの伝道であり、その足掛かりとしてのローマ訪問でした。
ローマの信徒への手紙を読むと、まだ一度も訪れたことのないローマの信仰者たちに自分を理解してもらおうと願うパウロの熱意と、同じ信仰に生きるローマの信徒たちへの信頼と敬愛の気持ちが伝わって来ます。
当時の手紙の書き出しは、差出人の自己紹介がなされた後、受取人への敬意がしめされ、挨拶の言葉を述べると言う形でした。そこでパウロも当時の形に従って「キリスト・イエスの僕、神の福音のために選び出され、召されて使徒となったパウロから」と自己紹介をしています。
そこに溢れているパウロの情熱を言葉にしたら、次のようになるでしょう。
「私は神に愛され、召し出されて使徒となりました。神の福音を宣べ伝えるため、イエス・キリストを宣べ伝えるためにあなた方のところへ行こうとしています。それは、私がキリストの僕だからです。私にとってキリストの僕であることは喜びです。誇りです。もちろんキリストの僕は私一人ではありません。あなた方も異邦人社会の中から召し出され、キリストに属するものとなった仲間です。私たちは皆、神の愛の中へ召し出されています。だから、神に愛され、召されて聖なる者となったあなた方のところへ訪ねて行き語り合いたいのです」。
熱のこもった自己紹介の後、パウロはこれからの出会いを期待して「わたしたちの父である神と主イエス・キリストから恵みと平和が、あなたがたにあるように」とローマの人々のために祝福を祈ります。キリスト者の挨拶は、神を信頼して相手のために祝福を祈ることだからです。
パウロだけでなく、キリスト者はすべて伝道の使命を担っています。伝道計画の立案者は少人数かもしれませんが、伝道のための祈りは教会全体のものです。一人でも多く教会へ集われるように祈りましょう。しばらく教会に来られないでいる方々がここに集えるように祈りましょう。「はじめまして」「ようこそ」の挨拶が祝福となるよう祈りましょう。何より、教会に係る全ての人が光の子となることを目指し、いつでもどこでも祝福の挨拶が飛び交うよう祈ってまいりましょう。
2015.10